音声マーケティングとは、ポッドキャストや音声広告など音声で見込み客や求職者との接点をつくる手法の総称です。このガイドでは定義と国内市場の動きを起点に、音声広告との違い、形式の選び方、始め方、外注の判断、AI検索で選ばれる仕組みまでを順に整理し、各章から詳しい記事へ進める地図としてまとめました。中でもBtoB企業の中心になるのは、経営者や社員の語りを積み上げるポッドキャストの活用です。
この記事の監修者

山本洋輔|なにゆえ株式会社 代表取締役
日本ブランド経営学会理事|株式会社マルタントン取締役
アビスパ福岡 AVISPA DAOブランドコーディネーター
1986年生まれ 岐阜県出身。映像制作会社に勤務したのち独立し、のべ500社・1万件以上の様々な媒体・形式のクリエイティブを手掛ける。2014年にドイツ発の解説動画制作会社 simpleshowの日本法人立ち上げ期に参画、上場企業80社以上の解説動画を制作。現在はYouTube運営、ビデオポッドキャスト番組プロデュース事業に注力している。2児の父。




音声マーケティングとは?定義と国内市場動向

音声マーケティングとは、ポッドキャストや音声広告を使い、音声で見込み客・求職者・既存顧客との接点をつくる施策の総称です。テキストや動画と違い、通勤や作業をしながら聴かれる「ながら接触」が生まれる点が特徴で、企業が発信する側に回れば信頼形成にも使えます。国内でも聴取者は着実に増えています。
音声マーケティングは、大きく音声広告と音声コンテンツ(ポッドキャスト)に分かれます。前者は配信サービスに広告を出して認知を広げる手法、後者は自社の番組を持って語りを積み上げる手法です。当社が支援するBtoB企業では、後者のポッドキャストを軸にした発信が中心になります。理由は、一度の収録が記事やSNSにも展開でき、営業や採用の場面でも二次利用できるからです。
企業が音声マーケティングを使う場面は、大きく4つに整理できます。商談前に自社の考え方を伝えて信頼を高める営業、価値観に共感する人を集める採用、社員が判断基準を共有する社内浸透、そしてAI検索に引用される自社ならではの情報を蓄積すること。1本の番組がこれらに横展開できる点が、音声を単なる発信手段以上のものにしています。
なぜいま音声マーケティングが注目されるのか
音声が注目される背景には、聴かれ方の変化があります。スマートフォンとワイヤレスイヤホンが普及し、通勤・家事・運動をしながら音声を聴く「ながら聴き」が生活に定着しました。画面を見続ける必要がないため、テキストや動画では取り込めなかったすきま時間に情報が届きます。
企業側の事情も重なります。当社が発信の相談を受ける場面でも、「テキストのSEO記事は似た内容で埋まってしまう」「動画は制作の負荷が高くて続かなかった」という声をよく聞きます。そのなかで、経営者が月1回語るだけで成り立つ音声は、続けやすさと独自性の両面から見直しやすい選択肢になりました。聴取のインフラが整い、発信側が続けやすい手法を探している——この需給の両方が、音声への関心を押し上げています。
BtoBで音声マーケティングが効く理由
BtoBで音声が効くのは、決裁に関わる層が聴いているからです。2026年2月に公表された「第6回ポッドキャスト国内利用実態調査」(15〜69歳の男女1万人が対象)によると、国内のポッドキャスト利用率は18.2%で、前年から1ポイント増えました(ポッドキャスト国内利用実態調査、2026年2月時点)。年代別では15〜19歳が40.5%、20代が28.8%と若年層ほど高く、15〜29歳に絞ると32.3%に達し、TVerやTikTokの利用率を上回りました。
同じ調査では、経営者・役員や管理職といった企業の決裁権者の割合が、ポッドキャスト非利用者より5.2ポイント高いことも示されています。BtoBの商談は、担当者だけでなく上長や役員が最終判断を下す場面が多く、その層に自社の考え方が届いているかどうかが受注を左右します。広告のように一瞬で流れる接触ではなく、30分の語りを最後まで聴いてもらえれば、価値観や判断基準まで伝わるでしょう。だからこそ、認知を広げるだけでなく「比較検討の場で選ばれる材料」を音声で積んでおく意味があります。
音声マーケティングの全体像と本ガイドの読み方
下の表は、音声マーケティングを何から手を付けるかの意思決定順に地図化したものです。各章と、詳しく解説した記事の対応を1枚で確認できます。
| 順序 | 読者の問い | 本ガイドの該当章/詳しく解説した記事 |
| ①全体像を知る | 音声マーケとは何か・伸びているのか | 本章(定義と市場動向) |
| ②手法を整理する | 広告とコンテンツはどう違うか | 音声広告との違い |
| ③選ばれる仕組みを知る | AI検索・信頼形成にどう効くか | 音声×AI検索の情報資産 |
| ④形式を選ぶ | ビデオか音声か | 主な形式と選び方 |
| ⑤始める | 手順・機材は何が要るか | 始め方と必要な機材 |
| ⑥外注を判断する | 制作・費用・運用代行はどうするか | 外注(制作・費用・運用代行) |
音声マーケティングの検討を意思決定順に整理した全体像
なお、オウンドメディア全体の中での音声の位置づけを先に押さえたい場合は、オウンドメディアの基礎から運用までの総合ガイドもあわせてご覧ください。
音声マーケティングと音声広告の違い

音声マーケティングと音声広告の違いは、「届ける」か「積む」かにあります。音声広告は配信サービスに出稿して短期の認知を広げる手法で、配信を止めると成果も止まります。一方でポッドキャストなどの音声コンテンツは、過去の回が資産として残り続け、営業・採用・AI検索まで効かせられる点が異なります。
どちらが優れているという話ではなく、目的によって選ぶ手法が変わるだけです。下の表では、目的・費用・成果の出方・資産性・AI検索での引用のされ方という5つの軸から、性質の違いを整理しました。
| 比較軸 | 音声広告(ペイド) | 音声コンテンツ=ポッドキャスト(オウンド) |
| 主な目的 | 短期の認知・到達 | 中長期の信頼形成・関係構築 |
| 費用の性質 | 配信量に応じた広告出稿費 | 制作・運用への投資(積み上げ型) |
| 成果の出方 | 配信中に到達し、停止で消える | 過去回が残り、後から効き続ける |
| 資産性 | 低い(フロー) | 高い(ストック=語りが蓄積される) |
| AI検索での引用 | されにくい | 文字起こし・記事化すれば引用元になりやすい |
目的別に見た音声広告とポッドキャストの性質の違い(当社の運用判断軸で整理)
音声広告が向いているケース
音声広告は、短期間で幅広い層に名前を知ってもらいたいときに向きます。新商品の発売やキャンペーン、地域や年代を絞った告知など、期間と目的がはっきりした施策と相性が良い手法です。配信サービスの広告枠に出稿するため、自社で番組を制作・運用する手間はかかりません。
一方で、出稿を止めれば露出も止まり、手元には何も残りません。継続的に予算を投じ続ける前提の施策であり、広告費が限られる中小企業にとっては、認知の一時的な底上げと割り切って使うのが現実的でしょう。
ポッドキャストが向いているケース
ポッドキャストは、時間をかけて信頼を築き、自社の考え方を資産として残したいときに向きます。BtoBのように検討期間が長く、担当者が社内で稟議を通す商材では、語りを通じて価値観や判断基準まで伝わることが後押しになるはずです。過去の回が残るため、営業前に聴いてもらう資料としても使えます。
当社は、中小BtoB企業がまず取り組む価値が高いのは「積む」側のポッドキャストだと考えています。広告は予算を止めれば途切れますが、経営者の語りは一度収録すれば記事・SNS・営業資料へ何度も使い回せるからです。
音声×AI検索(AIO/LLMO)で引用される情報資産という考え方

音声コンテンツがAI検索で効くのは、AIが商品スペックよりも「誰が・なぜそう考えるのか」という文脈(ナラティブ)を引用元に選びやすいからです。経営者の語りは、他社が簡単に真似できない自社だけの材料になります。ただし検索エンジンやAIは音声ファイルの中身をそのまま読み取れないため、番組を文字起こしして記事やSNSの形でも公開しておくことが前提です。そのうえで積み上げれば、AIが自社を説明するときの引用材料になります。ここが音声マーケティングの中でも当社が最も重視する領域です。
AIが引用するのは「文脈」である
検索の入口は、キーワードを打ち込む従来型から、AIに質問して要約を受け取る形へ移りつつあります。このときAIは、どこにでもある一般論よりも、出どころのはっきりした具体的な語りを引用しやすいと当社は見ています。「なぜその事業を始めたのか」「どんな判断基準で顧客を選ぶのか」といった話は、どの会社でも書ける一般的な解説とは違い、AIにとって参照する価値の高い材料になるからです。
いまはAIに自社名を尋ねても、求人媒体の定型文や競合の情報ばかりが返ってくることがあります。これは、AIが引用できる自社発の情報が不足しているサインでしょう。テキストのSEO記事は多くの企業が似た内容で用意していますが、経営者本人の言葉で語られた番組は数が限られます。だからこそ、語りを構造化して積むことがAI検索時代の独自性につながります。
AIに引用されやすいのはどんな話か
引用されやすいのは、自社にしか語れない具体的な話です。創業の背景にある問題意識、顧客を選ぶときの判断基準、他社と異なる仕事の進め方、失敗から学んだ改善の経緯といった内容は、一般的な用語解説では代替できません。数字や事実を交えて具体的に語るほど、AIが根拠として扱いやすくなります。
反対に、どの会社でも言える一般論や、抽象的なスローガンだけの発信は引用されにくいままです。ポッドキャストは、聞き手が質問を重ねることで、経営者の頭の中にある暗黙の判断基準を言葉に引き出せる形式でもあります。当社では、この「問いで語りを引き出す」設計を企画の核に置いています。発信の量を増やす前に、自社しか語れない具体を言葉にできているかを見直しましょう。
語りを積み始めた企業が先行する
当社の見解として、音声は「聴かれて終わり」ではなく「引用されて残る」資産だと位置づけています。当社のなにゆえがたりでは、月1回60分の収録を起点に、note記事・X投稿・動画まで多媒体で語りを蓄積する運用を標準にしています。1回の語りを30〜120本の発信素材へ展開すれば、経営者の拘束を最小限にしながら資産を積み上げられます。
実際、当社が支援したアビスパ福岡の関連運用では、通常のSNS運用と比較してnote VIEW数が前年比527%増となり、商談前に「note見ました」と声をかけられる接点が増えました。いま語りを積み始めた企業ほど、AI検索で説明される材料を先に確保できます。採用の観点で音声・動画を組み合わせたい場合は、採用動画の企画から制作までの総合ガイドも参考になります。
音声マーケティングの主な形式|ビデオと音声ポッドキャストの選び方
音声マーケティングの主な形式は、映像のない音声ポッドキャストと、動画と音声を同じ番組として配信するビデオポッドキャストの2つです。トークが主役という点は共通しますが、「誰が話しているか」を顔で伝えたいか、音声だけで手軽に量産したいかで選ぶ形式が変わります。
ビデオポッドキャストは、YouTube動画ほど作り込まずにトーク主体で収録でき、話し手の人柄や表情まで伝わるため、初対面の信頼形成や採用の場面で使いやすい形式です。一方の音声のみの形式は、収録・編集の負荷が軽く、ながら聴きの接点をつくりやすいのが利点でしょう。自社が営業や採用で「顔と価値観」を見せたいのか、まず手軽に発信を続けたいのかを基準にすると選びやすくなります。
形式ごとの違いや企業での使い分け、YouTubeとの棲み分けは、ビデオポッドキャストの企業活用ガイドで実例とともに解説しています。自社に合う形式を決めてから、次の始め方へ進むと迷いません。
企業ポッドキャストの始め方と必要な機材
企業ポッドキャストは、目的とテーマを決める→機材を揃える→収録する→編集して配信・二次展開する、という流れで始められます。最初から完璧な設備は不要で、スマートフォンとマイクがあれば小さく始められる施策です。続けられる仕組みを設計できるかが、成果を左右します。
始め方でつまずきやすいのは、手順そのものより「何を話すか」と「続けられるか」でしょう。企画から配信までの流れ、内製と外注の工数・費用の考え方、音声単独運用の限界と多媒体展開の設計は、企業ポッドキャストの始め方と活用ガイドで4ステップに沿って整理しています。話すのが得意でなくても、聞き手を立てる対談形式にすれば無理なく続けられます。
機材は、マイク・ヘッドフォン・編集ソフトの3点が最小構成で、用途しだいで1万円台から始められます。複数人での対談やリモートゲスト、映像も残す場合は必要な機材が変わるため、用途別の選び方と具体的な製品の目安はポッドキャスト収録機材の選び方にまとめました。高価な機材を最初から揃える必要はなく、続く見込みが立ってから増強するのが現実的です。
音声マーケティングを外注する|制作会社・費用・運用代行

音声マーケティングの外注は、番組を立ち上げる「制作」と、配信を止めずに続ける「運用代行」に分かれ、対応範囲によって費用が大きく変わります。収録だけを頼むのか、それとも企画・編集・SNS二次展開・記事化・AI検索対応まで任せるのか。この線引きで、選ぶべき依頼先が決まります。
制作会社を選ぶときは、対応範囲の広さ・料金の透明性・継続運用のサポート・AI検索への対応を軸に比べると失敗しにくくなります。各社の特徴と選び方は、ポッドキャスト制作会社の選び方と比較で解説しています。費用は「1本いくら」で見るより「成果につながる単価」で考えるのが実務的で、依頼内容別の相場と内訳はポッドキャスト制作費用の相場で早見表にまとめました。
配信を継続する体制まで任せたい場合は、運用代行という選択肢があります。収録から編集・配信・二次展開までを一気通貫で任せられるかどうかが、続く仕組みづくりの分かれ目です。会社ごとの対応範囲と料金の比べ方は、ポッドキャスト運用代行サービスの比較で確認できます。当社のなにゆえがたりでも、月1回の収録を記事やSNSへ多媒体展開する運用を提供しており、X運用では通常運用と比較してインプレッションが237%増となった支援実績があります。
よくある質問
音声マーケティングは中小企業にも有効ですか?
有効です。むしろ広告予算や知名度で大手と競いにくい中小企業ほど、経営者の語りで差別化できる余地があります。前述の国内調査でも、ポッドキャスト利用者は企業の決裁権者の割合が非利用者より高いと報告されており(ポッドキャスト国内利用実態調査、2026年2月時点)、BtoBの少数の意思決定者に届けたい中小企業と相性が良い手法です。月1回の収録を記事やSNSへ展開すれば、限られた人員でも無理なく続けられるはずです。
ポッドキャストとラジオ広告(音声広告)は何が違いますか?
ラジオ広告や音声広告は「配信枠を買って届ける」手法で、出稿を止めると露出も止まります。ポッドキャストは「自社の番組を持って語りを積む」手法で、過去の回が残り続け、営業資料やAI検索の引用材料として後から効きます。短期の認知拡大なら音声広告、中長期の信頼形成と資産化ならポッドキャストが向いています。目的に応じて使い分けましょう。
まとめ
音声マーケティングは、「届ける」音声広告と「積む」ポッドキャストに分かれます。中小BtoB企業がまず価値を得やすいのは、経営者の語りを積み上げて営業・採用・AI検索まで効かせられるポッドキャストの活用です。最初の一歩は、自社が短期の到達と中長期の資産のどちらを求めているかを決めることです。方向が定まったら、ビデオポッドキャストの企業活用ガイドで形式を選び、企業ポッドキャストの始め方と活用ガイドで立ち上げ方を確認すると、迷わず進められます。


