オウンドメディアの失敗はなぜ起きる?原因の3類型と立て直しの判断

オウンドメディアの失敗はなぜ起きる?原因の3類型と立て直しの判断

オウンドメディアの失敗は、成果がゼロだから起きるのではなく、多くが「成果の出る前に続けられなくなって止まる」ことで起きています。原因は目的不在・更新停止・体制不備の3類型に集約でき、状況によっては撤退よりも形式を変えて立て直せます。失敗の原因を段階ごとに切り分け、撤退か立て直しかを決める基準まで整理します。

全体像はオウンドメディアとは何かを整理した完全ガイドで確認できます。

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この記事の監修者

山本洋輔|なにゆえ株式会社 代表取締役

日本ブランド経営学会理事|株式会社マルタントン取締役
アビスパ福岡 AVISPA DAOブランドコーディネーター
1986年生まれ 岐阜県出身。映像制作会社に勤務したのち独立し、のべ500社・1万件以上の様々な媒体・形式のクリエイティブを手掛ける。2014年にドイツ発の解説動画制作会社 simpleshowの日本法人立ち上げ期に参画、上場企業80社以上の解説動画を制作。現在はYouTube運営、ビデオポッドキャスト番組プロデュース事業に注力している。2児の父。

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オウンドメディアの「失敗」とは何か

効果ありと回答82.1%に対し課題1位コンテンツ数の維持58.1%を並べ、失敗の正体が成果ゼロではなく継続の破綻であることを示す比較図
効果は8割超が実感する一方、課題の1位は更新の継続。失敗は成果ゼロではなく「継続の破綻」であることを示す(出典: 宣伝会議 オウンドメディア実態調査 2024年5月時点を基に当社作成)

オウンドメディアの失敗の実態は、成果が出ないことよりも「更新が続かずに止まること」にあります。効果を実感している企業のほうがむしろ多く、問題は効果の有無ではなく続け方の設計にあります。失敗を正しく捉えるには、「成果ゼロ=失敗」という思い込みを外すことが出発点になります。

広報・オウンドメディアの担当者117名を対象にした調査では、オウンドメディアに「効果がある」と答えた人は82.1%にのぼりました(宣伝会議 オウンドメディア実態調査 2024年5月時点)。ただし同じ調査で効果の1位に挙がったのは「企業イメージ向上、ブランディング」であり、実感されている効果は売上直結に限りません。当社はこの数字を、オウンドメディアという手法自体はすでに成果を出せる段階にある証拠だと見ています。だからこそ失敗の対策は「どうすれば効果が出るか」ではなく、「どうすれば止まらずに続くか」に置くべきです。

一方で、同じ調査では課題の1位に「コンテンツ数の維持」が58.1%で挙がっています。効果は感じているのに、更新を続けること自体につまずいている——この構造こそが、オウンドメディアの失敗の正体です。失敗を「成果の欠如」ではなく「継続の破綻」として捉え直すと、打つべき手が変わってきます。

ここで区別しておきたいのが、「失敗」と「まだ成果が出ていない段階」の違いです。オウンドメディアは成果が表れるまでに時間がかかるため、始めて数ヶ月で数字が伸びないこと自体は失敗ではありません。問題になるのは、その途中経過を失敗と誤認して手を止めてしまうことです。更新が止まった時点で、はじめて本当の失敗になります。逆に言えば、更新さえ続いていれば、失敗はまだ確定していません。

オウンドメディアが失敗する3つの原因類型

課題上位3つコンテンツ数の維持58.1%制作の効率化49.6%人材不足48.7%を並べ、失敗の重心が企画より運用にあることを示す棒グラフ
上位3課題はいずれも日々の運用に関する項目で、失敗の重心が企画より運用にあることがわかる(出典: 宣伝会議 オウンドメディア実態調査 2024年5月時点を基に当社作成)

オウンドメディアの失敗の起点は、設計段階・運用段階・評価段階の3つに切り分けられます。原因を段階ごとに整理すると、「自社がどこでつまずいているか」が特定でき、打ち手が具体化します。原因を10個も20個も列挙するより、まず3つの段階で切り分けるほうが実務では動きやすくなります。

先ほどの実態調査で課題の上位に並んだのは、「コンテンツ数の維持(58.1%)」「制作の効率化(49.6%)」「コンテンツ制作の人材不足(48.7%)」でした(宣伝会議 オウンドメディア実態調査 2024年5月時点)。この並びが示すのは、失敗の重心が企画・戦略よりも日々の運用に寄っていることです。多くの企業は、何を書くかの前に「書き続けられるか」で行き詰まっています。

次の表は、失敗の原因を発生する段階で3レイヤーに再整理し、段階ごとの典型症状と打ち手の方向をまとめた当社独自の分類フレームです。当社の支援知見と、上記実態調査の課題順位をもとに整理しました。

段階 典型症状 起点となる原因 打ち手の方向
設計段階 誰に何を届けるか曖昧・KPIが未設定 目的不在・ペルソナ未定義 目的とゴールを先に固定する
運用段階 更新が滞る・記事が積み上がらない 属人運用・更新負荷の過大(体制不備) 更新負荷を下げる仕組みにする
評価段階 成果が見えず疲弊・社内で説明できない 指標がPV/CVに偏る 検索以外の効き方も評価軸に入れる

自社がどの段階でつまずいているかは、次の3つの問いで大まかに切り分けられます。

  • 記事のテーマや読者像を、担当者ごとに違う言葉で説明していないか(=設計段階の疑い)
  • 直近3ヶ月で、当初の計画どおりに記事を公開できているか(=更新できていなければ運用段階の疑い)
  • 成果を聞かれたとき、PVとCV以外に説明できる指標を持っているか(=持っていなければ評価段階の疑い)

段階で切り分けると、同じ「うまくいかない」でも処方箋がまったく違うことがわかります。設計段階の失敗は作り直しが必要ですが、運用段階の失敗は仕組みで救えます

設計段階の失敗:目的とペルソナが定まらない

設計段階の失敗は、「誰に・何のために届けるか」が曖昧なまま走り出すことで起きます。目的が定まらないと記事のテーマも読者像もぶれ、結果として誰にも刺さらないコンテンツが積み上がります。ここでのつまずきは、後から小手先の改善では立て直しにくいのが特徴です。

たとえば「とりあえず認知を広げたい」という漠然とした目的では、集客なのか採用なのか商談前の信頼形成なのかで、書くべき内容がまったく変わります。目的が1つに定まっていないメディアは、記事ごとに狙う相手が変わり、読者から見ると「何のサイトなのか」が伝わりません。

当社は、目的を1つに絞り、その目的が達成された状態(ゴール)を先に言語化してから記事設計に入るべきだと考えています。目的の解像度が、そのまま記事の解像度になるからです。ゴールが「商談前に自社の考え方が伝わっている状態」なら、書くべきは検索上位を狙うノウハウ記事だけではなく、自社の価値観や判断基準を語るコンテンツだと決まります。

運用段階の失敗:更新が止まる

運用段階の失敗は、記事の企画・執筆・公開を担う体制が続かず、更新が止まることで起きます。担当者ひとりに依存した属人的な運用ほど、その人の異動や退職で一気に止まります。実態調査で課題の上位に「コンテンツ数の維持」「制作の効率化」が並んだのも、この運用負荷の重さを反映しています。

ここが3類型のなかで最も多くの企業がつまずく段階です。記事を1本仕上げるには、企画・構成・執筆・編集・入稿・公開後の分析と、想像以上の工程がかかります。これを本業の片手間に、しかも継続して回し続けるのは、少人数の組織ほど難しくなります。月に何本もの記事をゼロから書き続ける前提設計そのものが、少人数の中小企業には過大な負荷になりがちだと当社は見ています。

つまり運用段階の失敗は、担当者の能力や意欲の問題ではなく、続けられない前提で仕組みを組んでしまったことの帰結です。更新が止まる仕組みは、次のH2で時間軸とあわせて詳しく扱います。

評価段階の失敗:成果の測り方を誤る

評価段階の失敗は、成果をPVやCVだけで測り、成果が見えずに疲弊することで起きます。オウンドメディアは効果が出るまで時間がかかるため、短期のPV・CVだけを見ていると「成果ゼロ」に見えてしまいます。すると社内で「意味があるのか」と問われ、続ける根拠を失っていきます。

厄介なのは、この段階の失敗は記事の質が高くても起きることです。良い記事を積み上げていても、測る指標を間違えていれば「効果が出ていない」という結論になってしまいます。測る指標を間違えると、成果が出ていても失敗に見えてしまいます

当社は、検索流入やCVだけでなく、商談前の信頼形成や採用時のミスマッチ低減といった「検索以外の効き方」も評価軸に入れるべきだと考えています。たとえば商談の場で「サイトを見ました」と言われる、応募者が価値観を理解したうえで応募してくる——こうした変化は、PVの数字には表れませんが、確かな成果です。

更新はいつ・なぜ止まるのか

更新停止の65.5%が開始半年以内、停止理由1位が運営担当者の不在54.3%であることを示し、主因が内容でなく体制だと表す図
更新停止の多くは半年以内に起き、主因は運用リソースの枯渇。内容ではなく体制の問題であることを示す(出典: Zenken オウンドメディアに関する調査 2023年4月時点を基に当社作成)

オウンドメディアの更新が止まるタイミングは、多くが開始から半年以内に集中します。しかもその主因は、記事の質やネタ切れよりも「運用する人がいなくなること」にあります。成果が出るより先に、運用そのものが力尽きてしまいます。

更新が止まるのは開始から半年以内が多い

運用担当者300名を対象にした調査では、運営を停止したオウンドメディアのうち65.5%が開始から半年以内に更新を止めていましたZenken オウンドメディアに関する調査 2023年4月時点)。さらに運営停止の理由の1位は「自社の運営担当者がいなくなった(運用リソースがなくなった)」で54.3%でした。この2つの数字が示すのは、失敗の多くが「内容の失敗」ではなく「体制の失敗」だということです。

問題は時間軸にあります。オウンドメディアは成果が出るまでに一定の期間を要するため、半年で止まると成果を確かめる前に終わってしまいます。せっかく積み上げた記事も、更新が止まれば検索評価も伸び悩み、投資が回収される前に打ち切られることになります。だからこそ、更新負荷を初期の設計段階で下げておくことが、失敗を避ける決め手になります。

更新を止めないための初期設計

属人運用が崩れる仕組みは、担当者の負荷が見えにくいところにあります。日々の業務に追われるうちに更新が後回しになり、いったん止まると「まとめて再開しよう」と考えて、そのまま止まったままになる——これが典型的な流れです。復旧のハードルは、止まっている期間が長いほど高くなります。更新を止めないためには、次のような初期設計が有効です。

  • 1人に集中させず、企画・執筆・確認の役割を分ける
  • 毎回ゼロから書くのではなく、素材を使い回せる制作フローにする
  • 無理のない更新頻度を先に決め、書ける量に計画を合わせる

更新頻度や運用体制の具体的な組み方は、オウンドメディアの運用を軌道に乗せる体制づくりで詳しく整理しています。当社が見ている更新停止の根本原因は、発信の前提を「担当者が毎回ゼロから記事を書くこと」に置いている点です。当社のなにゆえがたりでは、月1回のインタビュー収録を起点に、そこからnote記事やX投稿、動画などへ展開する運用を標準にしています。発信の起点を「書く」から「語る」に変えることで、更新の手が止まりにくくなるという発想です。

撤退・リニューアルの判断基準

目的適合度と継続可能性の2軸から撤退・縮小・目的再設計・継続を分岐させ、撤退が妥当なのは4結論中1つだけと示す判断フロー図
目的適合度と継続可能性で分岐すると、撤退が妥当なのは1パターンのみ。多くは縮小や形式転換で立て直せる(当社の撤退・継続判断基準に基づく)

オウンドメディアをやめるかどうかは、これまで費やした費用や時間ではなく、「目的への適合度」と「継続可能性」の2軸で判断するのが妥当です。この2軸で見ると、撤退・縮小・形式転換・目的再設計のどれが適切かが整理できます。感情や惰性ではなく、基準で決められる状態にすることが大切です。

多くの現場では、「ここまで投資したのだから」というサンクコスト(埋没費用)が判断をゆがめます。しかし、すでに使ったお金や時間は、続けても撤退しても戻りません。判断すべきは「これから先、続ける価値があるか」だけです。過去の投資額を判断材料から外すと、意思決定はぐっとシンプルになります。当社は、次の2軸だけで自社の位置を確かめることを推奨しています。

目的適合度 \ 継続可能性 継続可能性が高い 継続可能性が低い
目的への適合度が高い 続ける(今の形を磨く) 縮小 or 形式を変えて続ける
目的への適合度が低い 目的を再設計する 撤退する

4つの象限は、それぞれ打ち手が異なります。目的に合っていて続けられるなら、迷わず今の形を磨き込みます。目的に合っているが続けられないなら、更新頻度を落として規模を縮小するか、後述する形式転換で負荷を下げて続けます。ここで安易に撤退すると、目的に合った資産を捨てることになります。

目的に合っていないが、続けられる体制はあるなら、記事を増やす前に目的の再設計に立ち返ります。走り続けられるからと目的のずれたまま量産すると、労力に見合わないメディアが育ってしまいます。そして目的にも合っておらず、続ける体制もない場合に、はじめて撤退が妥当な選択になります。

このマトリクスの要点は、「継続可能性が低い」=「即撤退」ではないことです。「やめたい」と感じたときこそ、この2軸で自社の位置を確かめてみてください。多くのケースは、実は撤退ではなく縮小や形式転換で立て直せる位置にあります。

失敗したオウンドメディアの立て直し方

失敗したオウンドメディアの立て直しは、戦略の再設計や規模の縮小に加えて、「更新負荷の低い形式に変えて、自社にしか出せない話を生かす」という選択肢があります。効果自体は多くの企業が実感している以上、蓄積してきた情報は資産として再利用できるからです。ゼロに戻すのではなく、続けられる形に組み替えるのが現実的な立て直しです。

一般的な立て直し策は、次の3つに整理できます。いずれも有効ですが、それぞれ効く場面が違います。

  • 目的の再設計:目的やペルソナがぶれている場合に有効。誰に何を届けるかを1つに絞り直し、既存記事もその目的に沿って取捨選択する
  • 運用の縮小:更新負荷が重すぎる場合に有効。更新頻度を落とし、無理なく続けられる本数まで計画を下げる
  • 外部との分担:社内リソースが足りない場合に有効。企画や執筆の一部を外部に任せ、社内は方向づけと確認に集中する

これらは有効ですが、いずれも「テキスト記事を書き続ける」という前提は変えていません。更新が止まる原因が運用負荷にある以上、立て直しで最も効くのは「発信の形式そのもの」を見直すことだと当社は考えています。書くこと自体が続かないのであれば、書かずに続けられる形へ移すのが筋だからです。

当社の見解:語りを起点にすれば書かずに続けられる

当社のなにゆえがたりでは、経営者へのインタビュー(語り)を起点に、その内容をnote記事・X投稿・動画・音声へと展開します。記事を毎回ゼロから書く運用と違い、月1回の収録に答えるだけで約1ヶ月分の素材が積み上がるため、更新が止まりにくくなります。これは、更新停止という最も多い失敗を、担当者の頑張りではなく「発信の起点の置き方」から解決するアプローチです。

経営者の語りに含まれる価値観や事業の背景は、他社には書けない自社だけの素材です。テキスト記事だけを前提にすると「書き手がいなくなれば止まる」構造から抜けられませんが、語りを起点にすれば、1回の収録が複数の媒体の素材に変わります。更新の手を止めずに、しかも自社にしか出せない内容を積み上げられます。

オウンドメディアが効果を出せる手法である以上、経営者自身の語りを止めずに積み上げることが失敗からの最も確実な立て直しになる、というのが当社の立場です。辞めるより、形式を変えて資産を生かすほうが合理的な場面は少なくありません。なお、これから新しく立ち上げ直す場合の初期設計は、オウンドメディアの立ち上げ手順と初期設計で扱っています。立て直しと立ち上げでは、最初に固める目的の設計思想が共通します。

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よくある質問

オウンドメディアが更新されなくなる主な原因は?

最も多い原因は、運用を担う人がいなくなり、更新のリソースが途切れることです。運用担当者300名の調査では、運営停止の理由の1位が「自社の運営担当者がいなくなった」で54.3%でした(Zenken 調査 2023年4月時点)。担当者ひとりに依存した属人運用ほど止まりやすく、役割を分け、更新負荷を下げる仕組み化が予防策になります。

失敗と判断して撤退すべきタイミングは?

撤退が妥当なのは、目的への適合度が低く、かつ継続できる体制もない場合に限られます。これまでの投資額(サンクコスト)は判断材料から外し、「これから続ける価値があるか」を目的適合度と継続可能性の2軸で見極めます。適合度が高いなら、撤退ではなく縮小や形式転換で続ける選択肢を先に検討してください。

失敗したオウンドメディアは立て直せる?

多くのケースで立て直せます。効果自体は8割超の企業が実感しており(宣伝会議 実態調査 2024年5月時点)、蓄積した情報は資産として再利用できるためです。目的の再設計・運用の縮小に加え、更新負荷の低い形式へ転換して発信を続ける方法が有効です。

まとめ

オウンドメディアの失敗の正体は、成果ゼロではなく「続けられずに止まること」です。原因は設計・運用・評価の3段階に切り分けられ、なかでも更新が止まる運用段階でのつまずきが最も多く見られます。撤退の判断は費やした費用ではなく、目的適合度と継続可能性の2軸で行い、多くの場合は縮小や形式転換で立て直せます。まずは自社がどの段階でつまずいているかを見極めることから始めてください。

オウンドメディアの全体像を先に押さえたい方はこちらで、基礎から俯瞰できます。

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